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Salesforceとkintone : 夢とリアルの狭間で

業務システムのスマホシフトとクラウド対応基盤になろうとしている「kintone」

最近気づいたのですが、kintoneと業務系パッケージとの連携はとても興味深いですね。それほと直近でもないですが、最近でもいくつかニュースになってますが、 基本どれも業務系のパッケージが裏側にあって、クラウド経由の情報配信・参照基盤としてkintoneが採用されている感じです。


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 エンタープライズアプリの分野でもスマホシフトはもう外せない要素になってきていますが、そのノウハウはもちろん、実際に一定規模以上の企業内で利用できるレベルの実装を行うのはそれなりの開発リソースがあるベンダーで会ってもけっこ大変です。スマホでの利用が前提になると社内LAN外からのアクセスも前提になるため、その辺りのセキュリティ等を考慮するのもぶっちゃけ大変です。

Enterprise App向けでサードベンダーが動きやすいPaaSは少ない

先日、私たちはセールスフォース・ドットコム社のSaleforce1 Platform上でのアプリケーション展開を進めていくことを発表し、その最初のサービスである「SalesFollowUp」をリリースしたわけですが、私たちがSalesforce1 Platformを選んだのも下記のような理由で、「ぶっちゃけ大変」な部分の実装を避けるためです。

co-meetingに続く企業向けのWebサービスを私たちのような開発リソースが限られている企業が選択すべきプラットフォームについて検討を重ねた結果、私たちが選んだプラットフォームがSaleforce1 Platformです。私たちがSalesforce1 Platformを選択した理由は下記の4つです。

  1. Webサービスの運用にインフラコストが発生しない
  2. ユーザー管理や各種セキュリティ関連機能など、企業向けソフトウェアサービスを提供するために必要な機能が用意されている
  3. スマートデバイス(スマートフォンやタブレット)対応が容易にできる
  4. AngularJSやREST APIなど、弊社が持つWebサービス開発技術をそのまま利用できる


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 B2C向けのサービスだとちょっと別ですが、Enterprise Appでアイデアあふれるサービスをスタートアップがリリースしても、それを一定規模以上の企業内で利用してもらうレベルに昇華させるには、UIなどの目に見える実装ではないいわゆる「裏側の開発」に結構な期間の開発リソースを割く必要があります。

PaaSにしろBaaSにしろ、アプリ開発のスピードを上げるプラットフォームは増えてきていますが、Enterprise Appで必要なユーザー管理やそれにまつわるセキュリティ関連の機能を提供しているプラットフォームは、国内でビジネスが出来るレベルで提供していることを前提に考えるとSalesforce1とkintoneしか存在しないと思っています*1

全体最適のSalesforce、部分最適のkintone

Salesforceはその商品展開からみても、業務やデータをつなげていこう、一体化していこうという意図が強く感じられます。それはその周りでビジネスをしているパートナーアプリケーションについても同様で、もともとのSales Cloudに蓄積されている顧客情報やシステムを利用するユーザー管理回りの情報を軸にして、Service Cloud(カスタマーサポート)、Marketing Cloud(商談化する前)、Analitics Cloud(Salesforce内外の情報をつなげ、参照・分析・活用)と展開し、今後は打倒SAPを掲げて業務システムに踏み込もうとしている。


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まあもちろん、そのすべてをSalesforceでやろうとするとかなりの費用が発生するため、そんなに簡単にはできません。この辺は家を建てたり、リフォームしたりするときの感覚に近く、当初は理想の環境を夢見ますが、自身が持つ資金と相談し、譲れない部分のみを維持しながらリアリティのある解決策を探していく。システム構築も一緒ですよね。

一方でkintoneは部分最適の色が強いサービスです。現在のkintoneのホームページを開いて最初にでてくるメッセージもそれを象徴しています。

kintone - サイボウズのビジネスアプリ作成プラットフォーム

 昔は(今もか)EXCELでやっていた社内やチーム内のちょっとした情報管理をkintoneを使えば(慣れれば)ものの数分でシステム化でき、その時点でスマホ経由で社外からセキュリティを保った状態で使えるようになる。システム化はなにもエンジニアだけでなく、こうしたサービスを触ったり、業務を改善するモチベーションを持った人間であればだれでもできます。

ただ当然現場手動でシステム(アプリ)を作っていくことになりますので、数が増えていくとどこかで破たんします。簡単であるが故にマネージャーやチームリーダーが変わっただけで従来のアプリを捨てて新しいアプリを作り直すことも普通に起こり得るでしょうし、それはEXCELを使っていても同じです。ただ、都度業務は間違いなく改善されます。典型的な部分最適ですが、現状のkintoneでできることを考えても意識的にそうしているのだと思います。だからこそシンプルで簡単ですし、価格も安い。

つまり、両者共見ている世界が違うと思います(今後はわかりませんが)。とは言え、現在の状況を考えると、それぞれシェアを伸ばしていくと思いますし、Salesforceとkintoneの両方を利用する企業も増えていくと思いますので、競合することも既に多いでしょうが、実際には共存していくことになるでしょうね。

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利用する側としては、両者の特徴を良く捉えた上で社内システムを検討する必要があると思います。kintoneを適用できる業務の幅は広いですし、込み入ったことを実現することもサードベンダーのサービスを利用したりすることで実現可能ですが、あまり頑張りすぎるとコストも運用・メンテナンスの手間が増大してしまうでしょう。

顧客情報や商談情報を軸に様々な情報やデータを関連させながら利用することを最初から前提とするのであれば、Salesforce以上に優れたプラットフォームは現状ないようにも思えますので、コストと利用規模を想定しながら最初からSalesforceを選択したほうが良いケースも多いでしょう。以前紹介したZapierのようなことがSalesforceとkintoneの間でもできたりすると、やれることも大きく変わるんですけどね。

300種類以上のアプリとSalesforceをつなぐシステム連携アプリ「zapier」 - Enterprise Apps Now

 いずれにしても、今後の動きがとても気になる分野です。

*1:APIが提供されていて、サードパーティアプリを作る機能を提供しているサービスはありますが、明確にパートナーと協力してアプリ展開する場を提供している企業となると、よりこの2つのプラットフォーム以外の選択肢がなくなる