ちょっと前に発表された LINEが社内で利用しているらしいグループウェア「Works Mobile」。思ったよりも注目を集めていにイメージなのですが、個人的にはとても注目しています。以前LINE HR Blogで下記のように紹介されていたことが理由です。
LINEのメーラー、グループウェアは一般的に利用されているものではなく、独自のものを利用しています。
独自のツールを導入することで、会社のフェーズに応じて最適なものを提供できます。また、社員のニーズをいち早く取り入れ、使いやすいツールに改善することができます。
と、書かれていたため、商品化されることを全く想像していませんでした。その分試したい欲求は高まっていたのですが、LINEの兄弟会社であるWorks Mobile Japanからのリリースによって試す機会が唐突に生まれました。
Works Mobileはメールサーバーとファイルサーバーの置き換えが可能な汎用グループウェア
このWorks Mobile。LINEに近いUIやLINEの公式スタンプを使えるメッセンジャーが目立ちすぎることもあり、社内SNSや社内LINEのようなイメージが強くなりがちですが、社内SNSというよりは、Google AppsやOffice365のような、「メールサーバーとファイルサーバーを置き換えられる」ところに踏み込んだ汎用的なグループウェアです。
知名度の高い国内のグループウェアの多くは、メールについてはWebメールクライアントを提供しているにとどまっているものが大半ですし、OneDriveやGoogle Driveのようなオンラインストレージについては、より少なくなります。Works Mobileはそこに踏み込んでいるんですよね。だから気になります。
ちなみに、提供している機能は下記の通りです。
- メール
- LINEのようなメッセンジャー(無料通話機能含む)
- カレンダー(タスク管理機能を含む)
- クラウドストレージ(ファイルサーバー)
- 社内ポータルおよび情報共有用の掲示板(全社掲示板的なもの)
社内ポータルや掲示板も社内SNS的なニュースフィードと言うよりは、旧来の掲示板に近い作りですので、社内SNSっぽさはあまりありません。社内SNSを使い慣れたチームよりも、むしろメールによるコミュニケーションを主体としてきた組織に合うサービスだと思います。
Works Mobileのホーム画面。掲示板には画像や必読表記のできる。投稿する際は掲示板を指定するが、必読表示にチェックを入れておくと、必読専用のメニューから見れるようになる。なかなか便利。
メッセンジャーはPCとMac向けにデスクトップアプリが用意されている。思ったほど他の機能とは統合されていないイメージ。現時点ではちょっと浮いている。各メディアの記事にはメールとの連携機能についても触れられていたので、今後に期待。
ですので、既存のグループウェアやGoogle Apps、Office365の置き換えを狙う前に、社内外にメールサーバーやファイルサーバーを立てて運用している企業への売り込みが中心になるサービスなのではないかと想像しています。
メールは非常によくできています
特に、メールは非常によくできています。よくここまで実装していると感心するくらいに。Gmail用の拡張機能としてサードベンダーや個人が提供している便利な機能をうまく取り込んでいるように見えました。
細かくは触れませんが、目を引いた機能を羅列しておきます。正直、このメール回りの各種機能だけで私はWork Mobileを導入したくなりました。
- 組織階層、役職管理ができる
- 外部メールインポート機能(既存のメールシステムからの移行が簡単そう)
- 全社共通のフッター設定(署名変更を都度全社に共有する必要がない)
- 組織構造に応じたグループメールを勝手に作ってくれる(アドレス帳に自動的に表示される)
- IMAP/POPにもちゃんと対応(既存のメーラーやスマホアプリも使える)
- 大容量ファイル送信機能(宅ファイル便的なもの。有効期限が過ぎると自動的にサーバーから削除され、ダウンロードできなくなる)
- 添付ファイルをクラウドストレージから選択できる
- 送信予約機能(指定した日時にメールを送ってくれる)
- 既読確認機能(メールの送信相手の開封状況がわかる機能。HTMLメールが前提。メール配信サービスやSalesforceIQ、SideKick等でよくある機能で、メール内にトラッキングコードを自動的に埋め込み、相手の開封状況を追跡できる)
- キーボードショートカットあり
- メモ作成機能(自分あてのメールをメモ代わりに使っている人向け。メモフォルダを勝手に選択してくれる他、ファイルを先に選んでメモを作成する機能もある)
- スタンプが使える
- 画像編集機能(添付画像のトリミングやコメント)
全社共通のフッター機能やグループメールの自動生成機能などは、メールを運用していると非常に嬉しい機能なんですよね。送信予約機能もとても嬉しい。
メールの基本画面。表示はリストのみ、上下分割、左右分割から選択できる。自分メモ用の「メモ作成」ボタンがあるのが面白い。
メール作成画面。社内用のメール限定だが、機密/社外秘などのセキュリティレベルを設定でき、有効期限付きのメールを送ったりできる。送信予約や画像編集機能、大容量ファイル送信機能など、気の利いた機能が多数用意されている。
保存できるメールの容量も一人当たり30GBですから、Office365(50GB)やGoogle Apps(30GB)と比較しても十分な容量です。
管理画面がシンプルでわかりやすい
Works Mobileは各種メディアで紹介されていたように、セキュリティ関連の機能も充実していますが、その設定は概ね管理画面上に記載されている内容だけで理解できるくらい容易で整理されています。こうした機能は時間を重ねるにつれて要望が増え、それに伴って設定画面も複雑になっていくものですが、現時点では他のサービスと比べると非常にわかり易い。
管理画面。わかり易い。
これは後発の強みとも言えますが、新規に顧客を開拓していく上での武器になりそうな気がします。
おそらく、Google Appsに正面から挑もうとしている
実運用したわけではないため、表面的な感想にはなりますが、感覚的には既存のOffice365やGoogle Appsの競合に十分なり得るサービスだと思います。大企業向けの導入でOffice365と勝負するのは現状は難しそうな気もしますが、SMB市場での勝負であればその容易さと機能の網羅範囲を考えると十分勝負になってしまうのではないかと。そして、これまでGoogle Appsが攻めていた領域に攻め込もうとしているのではないかと思います。主に新規で。
LINEのイメージが強烈にあるため、それがどう影響を及ぼし、実際にどの程度の実績を今後上げていくのかはわかりませんが、モバイルアプリも含めて完成度は高く、非常に魅力的なサービスです。
料金プラン。メールやクラウドストレージが使えるのはベーシックから。Google Apps for Workとほぼ同じ価格設定。メールとクラウドストレージのないライトプランを用意しているのは、他のサービスの利用者にも使ってもらったり、共存を図るためだろうか。
メールサーバーやファイルサーバーの置き換えを検討する際には、候補の一つに入れても良いサービスだと思います。
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