最近は国内の法人向けサービスでも、申し込み時の文書がスキャンされたデータのみで、原本郵送が必要のないケースも増えてきました。相互の記名押印が必要な契約書については依然として紙ベースですが、申し込みや発注といった一方通行の書類はデータだけで済ませている企業も増えているようです。
PandaDocはそういった営業活動におけるサイン(署名)や日付記入が伴った、後のエビデンスとなるような文書の作成や相手方とのコミュニケーション、そして申し込み等の行為をWebのみで完結できるようにするサービスです。
このPandadoc、先日ご紹介したquoterollerと同じ会社が提供しています。ちょっと調べたところ、どうやらquoterollerは今後このPandadocに統合されていくようです。現時点でもquoterollerをサインアップすると勝手にPandaDocにサインアップされます。
見積、提案、契約からクロージングまで、販売活動のすべてを完結できる「quoteroller」が面白い - Enterprise Apps Now
quoterollerが「提案書」に絞っていたのに対して、PandaDocはもう少し幅広い用途を想定しているようです。その反面、販売額等の管理はPandaDocでは行わず、SalescorceをはじめとするSFA/CRMと連携して任せてしまおうとしているようです。
PandaDocでできること
英語ですが、動画を見るとできることは大体わかるのではないかと思います。「Sales Document Automationとあるように、営業活動で作成する文書を軸にした社内外のワークフローをオールインワンで処理できるサービスです。
文書を作成し、社内の関係者(上司やその他レポートライン)の承認を経た文書を顧客に送信し、顧客とチャットでコミュニケーションを取りながら内容を詰め、提案書であればその画面上でサインや申込とチェックを顧客側がいれれば、そのままそれをエビデンスとして編集不能な文書として保存できます。
PandaDocの特徴
文書の作成効率が上がる
提案書や企画書に必要な要素を事前にテンプレートとして登録しておくことができる他、やはり事前にカタログに商品情報を登録しておくことで、商品を選択するだけで見積等を埋め込むことができます。
会社概要や各商品の説明資料や基本的な見積情報をContent Libraryとして登録しておくことで、文書作成を効率化できる
カタログに商品情報を登録しておくことで、文書中に価格情報を商品を検索して選択するだけで埋め込むことができる
提案書を作成する際、商品に関する基本的な説明資料や特記事項等は過去の資料をあさって流用することは多々あると思いますが、担当者が個々にカスタマイズした内容だったりして使ってよいものかどうか悩むこともよくあると思います。
PandaDocを利用し、Content Libraryに登録されているものは会社としてオーソライズされたコンテンツであることを前提にしておけば、作成者は安心して文書を作成することができますし、各顧客ごとに特化した内容を入れ込みたいのであれば、それは完成した過去のドキュメントを見ながら作成することもできます。
公認情報と文書ごとにカスタマイズされた情報を明確に分けることで、作成者の迷いも減り、かつ各個人が作成した文書の質も確保できるのではないかと思います。
作成した文書やテンプレートには変更履歴も保存されますので、マーケティング部門等が変更を加えた際も、文書作成者はその変更箇所を確認することができます。
作成した文書を軸にした社内外のワークフローを一貫して回せる
PandaDocは提案書や見積書の作成だけでなく、文書中にFieldと呼ばれる社内外の関係者が入力可能な入力フォーム的な要素を埋め込むことができます。このFieldにはロールとして役割を持たせた社内外の関係者を割り当てることができます。
ロールを設定
各Fieldにロールを設定できる
PandaDocが特徴的なのは、文書の作成だけに閉じず、作成した文書のURLを顧客に送り、内容の確認とそれに対する質疑応答等のコミュニケーション。内容を確認した上でのサイン等を含めた承認(発注)行為までをPandaDoc上で完結できることです。
PandaDoc上でメールを送ることができる
送られてきたメールから文書を開ける
記入しなければいけない場所は画面上で促してくれる
顧客とのやりとだけでなく、社内のレビューや承認プロセスも設定できる
チャットを利用して文書に関する議論や質疑応答もできる
この一連のやり取りをファイルをコピーしてメールや紙でやり取りするのではなく、PandaDoc上の一つのデータを関係者で共有するため、情報が分散することや版が異なる資料を誤って確認してしまうこともありません。
関係者の対応状況や閲覧状況を確認できる
関係者が同一のURLを持った文書を参照するからこそできることですが、PandaDocにはなかなか強力な分析機能がついています。送った文書を誰が、どのページを、どの程度の時間読んだのかを画面上で把握できるようになっているんですね。
ページごと、個人ごとの参照情報を確認できる
作成した文書の数が増えていけば、文書の閲覧状況と成約率の因果関係等も分析できるようになりますし、個人視点で考えても作成した文書を振り返る上で非常に有用な情報が得られそうで、魅力を感じます。
Salesforceとも連携可能
quoterollerからPandaDocにシフトするにあたり、商談や売り上げの管理機能は排除されたように見えます。そのためか、Salesforceをはじめとする各種SFA/CRMとの連携は強化されたようにも見えます。
Salesforceとの連携であれば、Salesforceの商談画面から文書を作成し、そのままSalesforceの画面上で文書作成が可能です。取引先や取引先責任者の情報をPandaDocと同期することも可能です。
連携可能なサービス
おわりに
quoterollerを前回調べ、かなり気に入っただけに、商談管理の要素を排除して文書に特化したPandaDocには多少抵抗がありましたが、調べていくとquoterollerで得た経験をもとにしてかなり洗練されたサービスに昇華されている印象でした。
実は、このPandaDocもPDF出力が日本語に対応していないのですが、サポートに問い合わせたところ、日本語対応も開発予定に加えるとの回答がありましたので、日本国内のビジネスでも利用できる可能性もあるかもしれません。
こうした営業文書や見積作成を効率化するサービスはこれまでもいくつか紹介していますが、利用者の多い既存のオフィスソフトを利用する形態ではなく、文書作成そのものの機能も提供しているサービスは他にあまりありません。導入するためには社内の文書作成の慣習を変える必要があり、それなりの敷居があると思いますが、定着できれば大きな効率改善になる可能性を感じます。
非常に面白いサービスです。
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Quote-to-Cash, Electronic Signature Software and Document Tracking