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無料から・ノーコードで・ブラウザのみで使える Airtable は「Excel を使いこなしている人」が次に使いたいツール

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「ノーコード」というキーワードを目にする機会が増え、にわかに気になってはいたのですが、今回 Airtable という ノーコード・ツールを見つけて、実際に触ってその使い勝手や、業務に取り入れた場合の使い方を考えてみました。

airtable.com

目次

ノーコードとは

ノーコード(No Code / No-Code)とは、プログラミングに必要なソースコードを書かずにアプリや Web サイトを構築できる手法のこと。

ローコード(Low Code / Low-Code)も、ほぼ同じ文脈で使われているような気がしますが、厳密には「ノーコードはコードを本当にまったく書かない」「ローコードはコードを書かなくても構築できるが、コードを書いて拡張することもできる」と区別するようです。(この記事では便宜上、両方の意味を含めて「ノーコード」と表記します。)

この定義を読んでいて、ノーコードというキーワードが目立つようになる以前から、実はすでにノーコードのツールをいろいろと使っていたことに気が付きました。

もっとも分かりやすいのが Web サイトの制作です。古くはホームページビルダー、最近では WixStudio 等を使って、ノーコードでもかなりの見栄えと機能を備えた Web サイトを作ることができるようになりました。

Salesforcekintone なども、まさにノーコードで業務アプリケーションを作れるツールですし、アプリ同士の連携も ZapierIFTTT のような iPaaS を使えば、API が理解できなくても実現可能です。

Airtable とは

Airtable は、Excel  と MySQL(データベース)を組み合わせたような Web アプリケーションです。

運営元はサービス名と同じ Airtable 社で、 2012年にシリコンバレーで創業。ファウンダーの Howie Liu氏は大学卒業後、2010 年に CRM を開発する「Etacts」を創業し、2011 年に Salesforce に売却しています。

Airtable の時価評価額は 2018 年の時点で 10 億ドル以上、今年 2020 年には 5,000 万ドルを新たに資金調達し、評価額が 30〜40 億ドルになったと言われています。

Airtable 自体はリリースから 10 年近くが経っており、それほど目新しいツールという訳ではないのですが、UI に古くささを感じさせる訳でもなく、評価額が伸び続けていることからも、この年月の間に着実にアップデートを重ねて、市場の評価を獲得してきたということなのでしょう。

Airtable の基本構成

Workspace

Airtable にサインアップすると、まずは「Workspace」(ワークスペース)を作成するように促されます。Workspace は Airtable 上で組織を表す単位で、この中でアプリを構築していきます。

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また、Workspace ごとにメンバーを割り振ったり、組織外のメンバーを招待したりすることができます。Slack の「ワークスペース」や、kintone の「スペース」と同じ概念だと考えれば良いでしょう。

Base

Airtable 上で作成するアプリを「Base」(ベース)と呼びます。ログインしたときに、アプリアイコンのように表示されているのが、それぞれ Base です。Excel で言えば、xlsx ファイル一つ一つにあたります。

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サインアップが完了すると、テンプレートとして、すでにいくつかの Base が登録されています。サインアップ時に「目指すゴール」や「会社の業種」「自分の役割」などの質問項目が出てくるので、その回答に応じて、サンプルとなる Base が選択されるようです。

Table

Base の中には、複数のデータテーブルを持つことが可能で、Airtable では、これを「Table」(テーブル)と呼びます。Excel で言えば「Sheet」にあたります。

Airtable の特徴

実際に Base を作成してみます。Base の作成方法は、以下の 3 種類があります。

  1. まっさらな状態からデータを手入力する
  2. Templates / Universe からテンプレートを探して作る
  3. 既存の CSVExcelGoogle スプレッドシートをインポートする

テンプレートはかなりの種類が用意されており、ざっと見ただけでも 100 種類くらいはありそうです。「Universe」というのタブからは、他の Airtable ユーザーが公開しているテンプレートを利用することもできます。

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テンプレートは「Templates」と「Universe」のタブから入手可能

 今回は、既存の Excel ファイルをインポートして、Base を作成してみます。Workspace の画面に表示されている「Import your project」から、既存の CSVExcelGoogle スプレッドシートをインポートして、すぐに Base を作成しはじめることが可能です。

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Excel ファイルをインポート(データはダミーです)

特徴 1.「データ型」の定義が簡単にできる

先ほどインポートした Table を見てみます。Table 名は「担当者一覧」としてみました。担当者名・電話番号・メールアドレスの 3 つの項目があります。

Airtable では、データの「型」が予め用意されており、簡単に設定ができます。例えば「メールアドレス」の場合、項目名の右にある ▼ ボタンから「Csutomize field type」をクリックし、「Email」を選びます。

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項目名の左にあるアイコンがメールに変わりました。そして、入力されている値にハイパーリンクが設定され、クリックするとメーラーが起動するようになりました。

一つ項目を追加して「初回コンタクト日」を作ってみます。field type は「Date」を選びました。すると、初回コンタクト日の入力形式が日付になり、ミニカレンダーも表示されるようになりました。

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Airtable のスマホアプリから見ると、電話番号には「通話/SMS 送信」のアイコンが、メールアドレスには「メール送信」のアイコンが、それぞれしっかりと表示されています。

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このように、field type を選ぶだけで、そのデータにあった表示形式や、入力形式を簡単に設定することができます。Excel のように書式設定や関数を設定する必要もなく、Salesforce や kintone のように設定画面からフィールド一つ一つにデータ型を設定する必要もありません。

他のツールでは「データの入力」と「設定」は「画面を切り替えながら」行う感覚がありますが、Airtable は行き来がシームレスで、作業がとてもスムーズです。

特徴 2. テーブル間のリレーションが簡単に作れる

次に、テーブル間のリレーションを作ってみます。「会社一覧」という table を別に作りました。「担当者一覧」に登録されている人が、どの会社に所属しているかをひも付けてみます。

「会社名」の項目を作り、field type は「Link to another record」を選択します。この Base に含まれている table の一覧が表示されるので、「会社一覧」の table を選択します。

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 フィールドに「+」のボタンが表示されました。このボタンを押すと先ほどリンクした「会社一覧」table のレコードが表示され、一覧から選択する(または、検索して選択する)だけで、簡単にひも付けることができました。

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ひも付けた先の「会社一覧」の table を開いてみると、こちらにも自動的に「担当者一覧」の項目が作られて、担当者名がひも付いていることが分かります。

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リンクされた情報をクリックすると詳細画面が表示され、table を移動せずに編集することできます。

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 他のツールのように「参照関係を設定しよう」と意気込まなくても、リストを編集している延長上で table 間のリレーションを簡単に作ることができます。

Airtable は「Excel を使いこなしている人」が次に使いたいツール

業務の現場では、多くの Excel が運用されています。例えば学習塾だったら、「生徒一覧.xlsx」「講師一覧.xlsx」「カリキュラム一覧.xlsx」というように、データの種類や業務の種類ごとに Excel が存在しており、複数の Excel を開いて行き来しながら業務を行っていることが多いのではないでしょうか。

Excel はとても優れたツールですが、問題は、業務で使用する Excel が増えれば増えるほど「転記作業」も増え、転記ミスや転記漏れが発生することです。

先ほどの例で言えば、「生徒の担任が誰で、その生徒はどのカリキュラムを受講しているのか」という情報をまとめたいと思ったら、それぞれの Excel に情報をコピペして持たせるか、あるいは、まとめるための新しい Excel を作らなければなりません。もしカリキュラムの名前が変更になったら、それぞれの Excel を修正する必要も出てきます。

もちろん、ファイル間で参照設定をしても良いのですが、参照元のファイルを編集したときにリレーションが崩れてしまうこともあり、その設計やメンテナンスを考えるよりは「新しく Excel を作ってしまおう」となりがちです。こうして、業務用の Excel が無限に増えていくのです。

いよいよそれでは仕事が回らなくなり、「マクロを組みたい」とか「何か業務アプリを導入したい」となってくる訳ですが、学習コストや導入コストの壁があって、ここはなかなか乗り越えられません。

しかし、Airtable なら「Excel を編集している延長線上」でデータベースを簡単に構築することができます。「VBAを組むまではいかないが、数式や関数はある程度理解できていて、現場の業務で日々、Excel を使いこなしていたような人たち」にとって、Excel の次に使う(あるいは、Excel の代わりに使う)のに、Airtable は最適なツールではないでしょうか。