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SalesforceからAsanaユーザーへの仕事の依頼をスムーズにする「Asana for Salesforce」

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AppExchangeをなんとなく眺めていたところ、AsanaのAppExchangeアプリが公開されていることに気が付きました。

appexchange.salesforce.com

目次

 Salesforceユーザーへの Asanaからの提案

AppExchangeにリストされたのは、2019年10月31日とのことで、結構最近です。AsanaとSalesforceの連携については以前も調べたことがあったのですが、その時はTray.ioを利用したデータの連携方法の紹介に留まっていました。

Tray.ioやZapierのような連携ツールを利用したサービス間の連携は、情報の流れが一方通行(SalesforceのデータからAsanaのタスクを作るとか)であれば気軽に使えるのですが、相互にデータや情報を行き来させながら運用しようとすると、まあできなくはないのですがかなりの気合が必要です。

そこまでするなら、それもSalesforceとの連携であればSalesforce上でコードを書き、AsanaのAPIを利用してなんか作ってしまうことも視野に入ってきますし、Salesforce上で動くアプリを検討した方が早いのではないかと考えるようになったりもするわけです。

Asanaが自社ブランドでAppExchangeアプリをリリースするのは、Salesforceユーザーに対して主体的にAsanaと組み合わせて利用することを本気で提案してくれていることを意味しますし、それがAsanaの「本気」なだけにどんなものか気にもなるわけです。

昨年10月に日本オフィスも開設されたこともあるからか、Asana for Salesforceに関しても日本語のページが既に公開されていました。

asana.com

asana.com

Asana for Salesforceを利用するためにはBusinessプラン以上の契約が必要とのことでしたが、30日間のトライアルができたため、自社の(Salesforceの)Sandbox環境にインストールして試してみました。

Asana for Salesforceの機能

Asana for Salesforceの機能は下記の通りです。

  • Salesforceの各種レコードページに配置可能なLightningコンポーネントが用意されている
  • レコードページからAsanaタスク、Aasanaプロジェクトを作成することができる
  • 既にAsana上に作成されているAsanaタスク、Asanaプロジェクトをレコードに接続することができる
  • レコードに接続されたAsanaタスク、Asanaプロジェクトの情報の把握ができ、タスクについてはコメントも利用できる
  • Asanaプロジェクトやタスクを自動作成するプロセスやフローを作成できる(指定の商談フェーズに達した際にAsanaプロジェクトを自動生成するプロセスのみ設定画面から作成可能。その他の自動化はプロセスやフローを手動で作成)

レコードページ上でAsanaタスクの登録はできますが、Salesforce側から操作可能なデータは絞られていますので、Salesforce上でAsanaを利用したタスク管理をするためのものでは「今のところ)ありません。

Salesforceユーザーをタスクの発注側、Asanaユーザーをタスクの受注側と捉え、相互の情報のやり取りやコミュニケーションを支援するためのアプリだと考えると良い気がします。

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Lightningコンポーネント上でAsanaタスクの作成、その場で担当者のアサインもできる。

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タスクを作成する際にプロジェクトも選択できるため、タスクの種類に応じて依頼先をコントロールしたりすることも可能。Salesforce上からAsanaのコメントも利用できる

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Salesforce上でAsanaタスクを作成したり、AsanaタスクをSalesforceに接続したりすると、AsanaタスクのコメントにリンクしたSalesforceのレコード情報が投稿される。なかなか見やすい

AsanaのLightningコンポーネントでは、AsanaタスクとAsanaプロジェクトの作成ができますが、タスクは何らかの返信を求める仕事の依頼を行うためのもので、プロジェクトはSalesforce上でのお仕事とは切り離されたまとまった一連の仕事を他のチームに引き継ぐために利用することが意図されていそうです。

Asanaプロジェクトの作成は自動生成も可能で、商談が成立したら自動的に開発用のプロジェクトを生成させることもできたりと、Asanaプロジェクトの作成をSalesforce上でのプロセス制御に組み込むことができるようになっています。便利ですね。

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商談があるフェーズに達した際にAsanaプロジェクトを自動生成するプロセスはAsana for Salesforceの設定画面から設定できる。Asana Templateを利用できるので、プロフェッショナルサービスの型が決まっているのなら、必要なタスクが網羅されたタスクが網羅されたプロジェクトを作れたりする。

自動化については、Tray.ioやZapierを利用して実現することもできますが、Salesforce内の機能であるプロセスやフローを利用できるのは魅力的です。 

Salesforceと組み合わせて利用するタスク・プロジェクト管理ツールについて

現状、Salesforce純正の汎用的なタスク・プロジェクト管理ツールは存在しないため、Saleforceと連携したプロジェクト管理を実現するためには、頑張ってそのための仕組みを作るか、Salesforce以外の会社が提供する何らかのツールを導入する必要があります。

それは今に始まったことではないため、Salesforceプラットフォーム上で動くプロジェクト管理ツールも当然存在しており、すぐに目につくところで有償なものだと「TaskRay」、無償だとSalesforce Labが提供している「Agile Accelerator」などがあります。国内でも「SMAGANN (スマガン) 」がありますね。

TaskRayについては現在は「Customer Onboarding Suite 」とうたっていますし、以前は「Post Sales Management」と表現していたこともありましたので、Asana for Salesforceのユースケースとまったく同じ用途を担うことを目的としている感があります。

システムを管理する側の視点で言えば、Salesforceプラットフォームに閉じて管理できるにこしたことはないのですが、プロジェクトマネジメントツールはそれを利用する当事者の好みが強く反映される分野でもありますし、やはりそれぞれのチームが高い生産性を得られてこそではあるので、Asanaが本気でAppExchangeアプリを提供してくれたことは、選択肢の幅が広がる意味でもSalesforceユーザーには朗報です。

サービスの文脈

サービス間の連携においては、一方が連携先のサービスの文脈に踏み込む深さでその利便性が変化します(Asanaは「コンテキスト」と表現していますね)。

昨年Salesforceに買収された「Vlocity」や私たちが提供しているカレンダーアプリ「Calsket」のように、最初からSalesforceの機能や業務の補完を前提として開発されたものであれば別ですが、多くのサービスは自分たちの文脈、世界観みたいなものを持っているものです。

Salesforceとの連携を目的としたAppExchangeアプリを開発する際に、Salesforceの文脈を無視して自分たちの文脈だけ意識して開発をしてしまうと、独立したサービスとしては優れていてもSalesforceと組み合わせて利用するには微妙なアプリになってしまうわけです。時々そうしたアプリを見かけると、作り込まれているものほど「あーもったいないなー」と感じてしまったりします。

また、元々Asanaが紹介していたようなTray.ioやZapierのような汎用連携ツールを利用した連携も、それはそれで大変便利なのですが、サービス間の文脈のずれを埋める作業はユーザーに委ねられることになるため、自由度は高いのですが難易度が上がりますし、「これさえできれば。。。」みたいなことが案外できなかったりします(コード書くところまで踏み込めば大体できますが)。

で、Asana for Salesforceがどうかと問われると、シンプルな連携ではあるのですが、Salesforceにしっかりと寄り添って作られている感じがします。Salesforce上でAsanaを使ってタスク管理をするためのものではないので注意は必要ですが、AsanaとSalsforceを組み合わせて利用するポイントを作り手なりに練り込んでいるようにも見えました。

あとはまあ、Asana for Salesforceの利用者が増えていけば、今後の継続的な改善にも期待ができるのでしょうね。

さて、どうなるか。