Chrome Webストアで見かけてずっと気になっていたサービスです。領域としては以前紹介したAPTTUS CPQ (Configure Price Quote)やドキュメントジェネレーターのConga Composerに近いサービスで、「quoteroller」という営業向けサービスをご紹介します。見積から提案、契約、クロージングまで、商談に関する手続きをすべて単一のシステムでまとめ、商談期間を短縮と営業現場の生産性を高めることを目的としたサービスですね。
国内では同種のサービスはまだ見たことはないのですが、商慣習として受け入れられるなら非常に魅力を感じるサービスです。
quoterollerでできることは下記の通りです。
- 提案書の作成(見積、契約文面含む)
- 提案書の配信(個別配信、一斉配信)
- 提案に関するコミュニケーションと承認・否認(電子署名も可)
- カタログ(商品:サービス、プロダクト、サブスクリプション)の管理
- 顧客管理(企業および担当者情報)
- 提案書や提案書内の各コンテンツのテンプレート化とその管理
quoterollerのコアな機能は提案書の作成と配信です。CMSライクな画面上で画像や動画を活用したリッチテキストを中心にした提案書の作成することができます。サービス(プロフェッショナルサービス)やプロダクト、サブスクリプションの3種類の商品情報とそれらを整理した価格表を管理することができ、提案書内で自由に商品を選択しながら利用可能です。Conga Composerが既存の慣習に合わせてOffice文書の自動生成にこだわっているのに対し、提案書の作成手法や表現の仕方を変えようとしている(感じがする)のも魅力を感じます。
スライドではなく、文書中心で構成された提案書を書く。PowerPointよりもWordで提案書を書くイメージに近い
作成した提案書はファイルとして顧客に渡すのではなく、URLを提示してブラウザで見ることを基本としています。感覚てきにはHTMLメールやランディングページ等を作る感覚にも近いのかもしれません。そのため、動画や画像を提案書中に埋め込んで表現することができます。
あるセクションを開いたら自動的に動画を流せたりする
そして、提案書を確認していて疑問点があれば、その画面上で提案書に関して質問したり、そのまま画面上でサイン(手書き)をした上で発注(契約)したりできます。Paypalを利用して支払いまで済ませてしまうことさえできたりします。非常に面白い。
画面上でサインを書ける
感覚的にはSaaSの有償登録やネットショッピングに近い感覚ですね。商品の解説を含めた顧客ごとにカスタマイズされた提案書をWeb上で確認し、そのまま申し込む。商品の内容にもよりますが、そうした元々Webのみで完結しているビジネスの商談スピードを従来型のビジネスの世界にも持ち込もうとしているようにも見えます。
提案書が読まれている状況も確認できる
quoterollerの導入社数はワールドワイドで35,000社。quoteroller上で成立した商談の総額は1.5億ドルとのことなので、小規模なビジネス(予想)を中心にそれなりな成果をみせているようにも見えます。
作成した提案書や提案書内の各パーツはテンプレート化でき、チームメンバー内で流用することができます。また、商品カタログを軸にしたCPQとしての機能など、提案書の作成時間そのものを短縮するための工夫も凝らされています。ドキュメント中心の提案書スタイルも、レイアウトや表現に個人差が生まれ、コンテンツの流用が難しいPowerpointに比べると、提案書作成時間の短縮につながると思われます。結果、顧客に対する提案書や見積の提出レスポンスも早くなるため、より商談期間の短縮につながるのでしょうね。
というわけで、非常に魅力的なquoterollerですが、現状は日本語環境で使うには少々厳しい状況です。Web上で完結している部分については日本語にも対応しているのですが、提案書のPDF出力機能が日本語に対応しておらず、対応予定もないとのこと。顧客が発注時に書いたサイン(電子署名)は出力したPDF上でしか確認できないため、提案書の日本語表記がすべて文字化けしてしまう現状では、少々利用にリスクを感じます。
ただ、quoterollerのコンセプト自体は非常に魅力的で、使えるものなら自分たちでも使いたいと感じるサービスでした。商習慣を考えると国内でそのまま利用するのは難しいサービスだとも思いますが、細かいヒントが詰まった面白いサービスだと思います。
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